取組の概要
医療に携わる者にとってコミュニケーションの相手は、患者、患者家族、医療スタッフなど、その対象は様々です。そして医療現場におけるトラブルの一因として、コミュニケーション能力不足が考えられます。これからの大学教育では、専門的な能力を身につけるとともに人間力の向上が必要です。
徳島大学では実践的な経験・実習の場を保育所に設定し、子ども達との継続交流を組み入れたコミュニケーション教育を実践しました。
目的
- 継続的な乳幼児とのかかわりの中から、ホスピタリティ・マインドを実体験として学び、自らの人間関係を見直す機会とし、患者と向き合える医療者を育む一助とする。
- 学生の交流を通して、地域の子育てを支援する。
行動目標
- 基本的なマナーを身につける。
- 相手の考えや気持ちを受け止めることができる。
- 自分の気持ちや考えを相手に伝えることができる。
- 仲間の様子に目を向けることができ、共に喜び合ったり、励ますことができる。
- 園児や仲間、指導者とのかかわりを通して、自己を振り返ることができる。
期待される効果
《学生への直接的な効果》
- 基本的なマナーの習得
- ホスピタリティ・マインドへの気づき
- 「役立ち感」「自己肯定感」の実体験
- 仲間への自己開示、信頼関係の構築
《長期的な視点から期待する効果》
- 子どもの存在を身近に捉え、将来の育児、出産に対する肯定的理解
- 小児周産期医療への関心
《地域の保育所への効果》
- 保育の向上:学生の保育補助によるマンパワーの充実
- 保育士への啓発:学生の関与による距離をおいた観察や内省
- 保護者への啓発:子どもと学生のかかわりから発見する新たな気づき
- 育児などに関する相談:かかわる教員との交流による相談、提案
実績
受講学生数(合計350名)
平成18年度後期 | 医学科1年生20名 |
平成19年度前期 | 医学科1年生45名、保健学科看護学専攻1年生70名 |
平成19年度後期 | 医学科1年生50名 |
平成20年度前期 | 医学科1年生42名、歯学部歯学科1年生1名、薬学部1年生2名、保健学科看護学専攻1年生67名 |
平成20年度後期 | 医学科1年生53名 |
授業風景&学生のつぶやき
言葉や行動の裏に隠れた気持ちがあると知った。散歩の帰り道にパートナーが何度も石を拾おうと座り込むので、「石が好きなんだなぁ・・」と思っていた。保育士さんが来て、「○○ちゃんは歩くの疲れちゃったのね・・」と言って、抱っこしてくださった。列の最後になってもまだ気づいていなかった自分に呆れてしまった。
これからは日常生活の中の自分自身のコミュニケーションのあり方を見直し、改善すべきところはきちんとしていきたい。普段からできていないことは、大切な場でもできないということを、改めて実感する実習だった。